オリンピック同様に音楽のコンテストも多く開催
古代ギリシャ人の「調和」に対する情熱がもたらした音楽の科学としての探求も重要ですが、同時に、彼らは儀式や演劇の場などで、大いに音楽を活用していたようです。古代オリンピックはギリシャが発祥ですが、そういった競技において人々の興奮を高めるために使われたのも音楽なら、オリンピックで競う「体操」以外にも「音楽」のコンテストも数多く開催されたという記録があります。
それは現代のように「器楽演奏の腕」を競うのではなく、詩=歌詞とともに歌われる音楽、現代風にいうとシンガー・ソング・ライターが自作を披露し、作品の出来を争う、というようなものだったようです。他の「競技」にくらべて、音楽の「競技」に関して推測が多くなってしまうのは、やはりここでも「楽譜」が存在しないからで、どんな音楽が演奏されていたかは、正確に再現できないからなのです。
「楽器」の点でも、古代ギリシャ文明は重要なものを生み出しています。オルガンです。紀元前3世紀、現在はエジプトのアレクサンドリアに住んでいた科学者で発明家のクテシビオスが考案した「水オルガン」が最初だと考えられています。オルガンは空気をパイプに送り込むことによって音を鳴らす鍵盤楽器ですが、初期のものはタンクに入った水の圧力でパイプに空気を通す仕組みになっていました。そしてこのオルガンは、古代ローマ帝国に伝わり、ローマ帝国が滅びた後も欧州各地に残り、現在でも数多くのキリスト教会に設置されている「欧州音楽の最重要の楽器の一つ」となっていますから、発明したギリシャの文明はやはり偉大です。