ありがたい講話
「コトノハメクリ」というタイトルは、看護師、あるいは僧侶として日々感じたことを「百人一首をめくるようにお届けする」という趣旨らしい。そして、毎回のエッセイの内容を簡潔にまとめた「今月の言の葉」はこうだ。
〈世界は広いが 視野は狭い しばし手中の ブルーライトを消して 慎ましく在る〉
この手の文章を読んでいると、自ずと「ありがたい講話」を聴いている心持ちになる。情報の洪水から心身の健康を守る、というテーマ設定に目新しさはないし、時にはスマホを切りましょうという提案も珍しくないが、やはり「現役の看護師にして僧侶」という、たぐいまれな肩書の威力は大きい。
「あとは、人智の及ばない大いなるものがなんとかしてくれます。はい大丈夫」という末尾に、植木等が演じた「無責任男」の決めぜりふ「そのうちなんとかなるだろう」を想起する向きもあろう。私もそうツッコミかけて、いや待てよと考えた。
玉置さんの結論は、余計なことで悩むのはよそうという意味なのだ。看護師が神仏に頼るのはまずいが、これは僧侶の重責を自覚して放つアドバイスなのだと。
冨永 格