30年ぶり二作目の「ライブ盤」
あの時は「やる」という選択肢があった。そして「やる」ことに存在証明を託すことが出来た。そう思うと、「やれない」今がどのくらい異常なことかが改めて痛感されないだろうか。
ビートルズの名曲「COME TOGETHER」を待つまでもなく「集まる」ことが出来ない。音楽を通した「一体感」が味わえない。音楽が同じ「空気」の中で共有されない。日本だけではなく世界の大衆音楽が史上最大、未曾有の危機に瀕しているといって過言ではないだろう。「ライブ盤」というのは、音楽が音楽たりえた幸せな時間の記録、と言っていいのではないだろうか。
浜田省吾のツアー「ON THE ROAD2011・The Last Weekend」は、映像だけではなく「ライブ盤」として残されている。彼にとっては、82年1月の初の武道館公演を記録した「ON THE ROAD」以来30年ぶり二作目の「ライブ盤」だ。そのこと自体が、あのツアーがどういうツアーだったかを物語っていないだろうか。
3枚組に収められているのは終演後の客出しのBGMまで含めた全40曲。超一流ミュージシャンたちの一期一会の演奏や「万が一」を覚悟したような浜田省吾本人の歌、更に、それを受け止める客席の空気。MCも映像もないことがより想像力を豊かにしてくれる。まさに「ライブ盤」なればこそだ。
ライブなき日本列島。ライブアルバムもライブ映像も作られないかもしれない2020年。コンサートスタッフや地方のイベンターは大丈夫なのだろうか。
再び日本中のコンサート会場で音が鳴らされ、客席が笑顔と拍手と歓声で埋め尽くされる日が来ることを願うしかない。
そして、その日が来た時に、今まで經驗したことのない感動的な場面が待っていることを夢見つつ、「ライブ盤」の意味を再認識させられている。
(タケ)