出生率上昇は高齢化率上昇の抑制につながる
国勢調査の補間補正人口によると、日本の総人口(日本人+外国人)のピークは2008年12月で、以後人口減少局面に入っている。本書の出版は2007年だったが、2005年に日本人の出生数が死亡数を下回ったこと、2000年の国勢調査に比べて日本人人口が減少したことで、2005年から人口減少局面に入っているとされている。
本書では、「人口モメンタム」(人口増加潜在力)という概念が紹介される。仮に直ちに合計特殊出生率が人口置換水準(近年では2.07程度)まで回復した場合に長期的に安定する人口規模(定常人口、静止人口)が、現在の人口規模に対してどの程度になるかという比率だが、1995年に1.01、2004年に0.89となったという。さらに国立社会保障・人口問題研究所の分析では2015年は0.78で、1995年以降、日本の人口の年齢構造はかなり大きなマイナスの惰性あるいは慣性力を抱えるようになってきた。
もうひとつ、本書で紹介される「安定人口」モデルは、人口の年齢構造が主に出生によって規定されていることを教えてくれる。国際人口移動がなく(封鎖人口)、出生率と死亡率が一定なら、いずれその国の人口の年齢構造は安定する(安定人口)。出生率が人口置換水準より低ければ、年齢構造が安定したまま人口規模が減少していく(人口ピラミッドの形が変わらないまま大きさが小さくなっていく)。そして、出生率が低いほど高齢者の割合が高くなる。
2017年の将来推計人口[出生中位(死亡中位)推計]では、合計特殊出生率の仮定が長期的に1.4程度で、高齢化率(65歳以上人口比率)は、2049年以降38%程度で推移する見通しとなっている。しかし、仮に合計特殊出生率が人口置換水準まで回復したら、長期的には高齢化率は27%程度(現在の高齢化率とほぼ同水準)で推移するようになることが、まち・ひと・しごと創生長期ビジョン(2019年改訂版)で示されている。出生率低下が高齢化率上昇の大きな要因であったことの裏返しで、今後の出生率上昇は高齢化率上昇の抑制につながる。