タケ×モリの「誰も知らないJ-OPOP」
失って初めて分かる事がある、ということに気付かされる日々が続いている。今まで当たり前のように出来ていたことが出来なくなる。それがいかに大切な事であるかを思い知らされる。2020年は、そんな年になっているのではないだろうか。
5月20日に発売されたflumpoolの丸4年ぶりの新作アルバム「Real」は、バンド生命を左右する逆境を克服したアルバムとなった。
声が出なくなってから丸1年
flumpoolは、ヴォーカルと作詞の山村隆太、ギターと作曲の阪井一生、ベースの尼川元気、ドラムの小倉誠司。関西出身の4人組。3人は幼稚園からの幼馴染。2008年に配信シングル「花になれ」でデビューした。
デビューアルバム「Unreal」は、アルバムチャート2位。その年にデビューした新人の中で傑出した存在だった。翌年には武道館二日間も経験、紅白歌合戦にも2009年から3年連続で出演した。2013年には台湾の世界的な人気バンド、五月天とも共演。共作のシングルも発売、2016年には台湾やシンガポールでも公演している。
そんな順風満帆に見えた中で山村隆太が「歌唱時機能性発声障害」で歌えなくなり活動を休止したのは2017年の12月だった。
治療に専念するために丸々一年のブランクを経て制作されたのが新作アルバム「Real」である。
バンドの中心メンバーが歌えなくなった時に、どう思ったか。筆者が担当しているFM NACK5の番組「J-POP TALKIN'」のインタビューで、阪井一生は「絶望やなと。flumpoolは終わったと思いました」と言った。
当事者の山村隆太はこうだ。
「もう駄目だと思いました。月に一回リハーサルで集まって歌ってたんですけど、どんどん出なくなって行って。絶望的。諦めてました。一段ずつでも階段を昇り始めたかなと思えるようになったのは半年以上経ってからですね」
その間、どんなことを考えていたのか。アルバム「Real」には、そんな日々のことが率直に、それこそ「Real」に綴られている。アルバムタイトルの「Real」は、レコーディングに入る前には決まっていたという。
「デビューした時は、僕らのこと、曲のエピソードやストーリーを誰も知らない。今は、真逆。声が出なくなってバンドを諦めかけた4人の等身大の『Real』を知ってくれている。零点になった自分たちのことを歌おう。それは作る前に決めてました」(山村隆太)。