聞いていて不思議と元気の出る曲
今日の1曲は、1952年、彼の最初の創作期に分類される時代に書かれたヴァイオリンのためのソナチネ、第1番です。
3楽章からなるこの曲は、急~緩~急とオーソドックスな構成で、明らかに伝統的な和声法も使っており、20世紀に盛んとなった調性のない「現代音楽」では決してないのですが、独特のハーモニーと、彼自身の投影であるようなエネルギッシュさを持ち、聞いていて不思議と元気の出る曲となっています。室内楽作品としてヴァイオリンとピアノで演奏されるのですが、後に、ヤニス・サンプロヴァラキスによってソロ楽器をサクソフォーン、伴奏をオーケストラとした「協奏曲バージョン」も作られて、「クレタ小協奏曲」と名付けられています。こちらも、サックスのあたたかい音色が、南の島ギリシャを思い起こさせ、ヴァイオリンとは違ったパワーみなぎる1曲となっています。
3楽章全体でも10分ほどしかかからない曲ですが、第二次世界大戦と戦後のギリシャを生き抜き、1000曲以上を作曲し、まだお元気な「ギリシャ最大の現代作曲家」テオドラキスの、不屈のエネルギーを感じるには十分な曲となっています。
本田聖嗣