フルホン魂 嵐山光三郎さんの古書愛はコロナ禍にもくじけない

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書かずにはいられない

   「コンセント抜いたか」は、引用作で1141回を数える週朝の名物連載。各誌のコラムやエッセイがこぞって新型コロナを切る中、78歳の大御所も例外ではない。ただ嵐山さんのこの文章には、時の話題に付き合うというより、古本文化を護るためにいま書かずにはいられない、という覚悟のようなものを感じた。

   都の休業要請が出ると、150以上の古書店が集まる神田の神保町にはメディアの取材が集中した。朝日紙上には「都の判断には本への教養を感じない。神保町は心の支え。研究で古書店が欠かせない人もいるのに」という私大教員の嘆きが載った。経験のない長期休業で行き詰まる店もありそうだ。

   新刊書店でも「自主休業」する店が相次いでいる。取次大手によると、4月下旬の時点で全国で1000店以上が閉めている。

   コロナ禍はあらゆる文化とその担い手を窮地に追いやった。この窮地をしのぐには、当事者がSOSを強く発信すると同時に、ファンやパトロンが支援の声を上げるしかない。編集者出身の作家である嵐山さんは、格好の旗振り役だろう。私は「フルホン魂」を拡散することくらいしか能がないけれど。

   コロナ一過、古書文化が消えていたという未来は見たくない。

   ※余談だが、新聞コラムで「コンセントを抜く」と書いたら、読者から「正しくはコンセントに差し込まれたプラグを抜くのであって、コンセントを壁から引き抜いたら発火の危険がある」とのご指摘をいただいた経験がある。

冨永 格

冨永格(とみなが・ただし)
コラムニスト。1956年、静岡生まれ。朝日新聞で経済部デスク、ブリュッセル支局長、パリ支局長などを歴任、2007年から6年間「天声人語」を担当した。欧州駐在の特別編集委員を経て退職。朝日カルチャーセンター「文章教室」の監修講師を務める。趣味は料理と街歩き、スポーツカーの運転。6速MTのやんちゃロータス乗り。

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