原作の詩も14世紀の有名なペトラルカ
今日の1曲、「西風が戻り、晴天がやってくる」は、1614年に書かれたマドリガーレ集 第6巻に収められています。5人の男女によってア・カペラで歌われる「5声部」の曲です。彼には同名の曲がもう1曲あるのですが、この曲のほうが、原作の詩も14世紀の有名なペトラルカであることもあってはるかに有名です。
「西風」は、欧州に春や初夏を告げる喜ばしい風です。ギリシャ神話ではゼフィロスという神のキャラクターが与えられています。冒頭から、「ゼフィロ、ゼフィロ・・・」と歌い出されるこのマドリガーレは、長い冬が終わって暖かい季節を迎える喜びに満ちており、400年後の我々が聴いても、ストレートにその感情が伝わってきます。一方で、フィレンツェのウフィツィ美術館にある「ヴィーナスの誕生」や「ラ・プリマヴェーラ(春)」の名画を見たときの感情にも通じる、とても典雅な雰囲気もたたえています。
現在、外に自由に出て春の風を肌で直に感じたり、イタリアの美術館に見学に行くことはかなわない夢となっていますが、音楽は、家の中でも聴けます。「風邪」に気をつけつつ、すてきな西「風」を音楽で味わってみませんか?
本田聖嗣