密閉、密集、密接。「3つの密」が同時に重なる場では、新型コロナウイルス感染拡大のリスクが高まるとされる。首相官邸の公式サイトに2020年4月15日掲載された「3つの密を避けるための手引き」によると、「密閉」空間にしないよう、こまめな「換気」をして風の流れを作ることが重要だとある。
しかし、窓がない密室や換気への理解がない現場では物理的・心理的に実施が難しいケースも。複数の患者や利用者、訪問者と絶えず空間を共有し、やむを得ず「3密」が生じやすい病院や福祉施設では、どんな工夫をしているのかを取材した。
診察室のドア開放、患者との会話漏れないよう配慮
東京都にある病院の眼科に勤務する看護師は、診察室の換気がしづらいと語る。大きな空間を壁で区切って複数の診察室としているが、窓がなく、各部屋のドアを開けなければ密室になる。受診患者と医師の距離は近い。また医師の背後には看護師が立っていたり、スタッフが通り抜けたりする「裏通路」があるが「1.5人くらいの幅で、すれ違うのに(相手を)避けないといけない狭さ」だという。
現在は特別措置として、患者が出入りするドアを開けて換気しながら診察しています。会話を立ち聞き出来ないよう、診察室前の中待合の椅子は全撤去しています。きちんと対策されている、という安心感を患者にもってもらえれば」
また新型コロナウイルス感染予防として数十台のサーキュレーターを購入し、裏通路に点々と置いて、空気を循環させている。プライバシーに配慮しながら、患者と病院スタッフ双方の感染リスク低減を目指しているようだ。
「換気」の必要性を理解してもらうことから
神奈川の障害者福祉施設に勤務する女性は、施設利用者が働く喫茶店や館内の食堂といった共用スペースを、9時から16時すぎまで換気し続けていると語る。利用者の作業開始から退勤するまでだ。新型コロナウイルス流行前は、換気するのは喫茶店内が焦げ臭くなったり、漂白剤を使ったりした時程度だったが、昨今の情勢を受けて『作業場や館内の換気をしてください』と上層部から呼びかけがあった。
「施設には知的障害を持つ利用者が来ています。窓などは閉じた状態が通常ですので、説明なしに開けたままにしていると『寒い』、『閉めないの?』と言う人もいます。いつもと違うので『なんで開いてるの?閉めたほうがいいんじゃない?』と思ってのことだと思います」
「今はウイルスが流行っていて大変だ」、「怖いらしい」と何となく認識し、漠然とした不安を感じている利用者もいる。感染しないためには手洗いやうがい、換気が必要だということをわかりやすく説明して理解を求めたうえで、常時換気に努めていると話した。