人口減少に少子高齢化、そして新型コロナ 「歴史的な大転換点」のいま

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■『日本経済の再構築』(著・小黒一正 日本経済新聞出版社)

   新型コロナウイルスの感染拡大は、我々の将来に影響を大きく与えることは間違いない。経済へのダメージを軽減するために、様々に国の財政の大幅な拡大が叫ばれ、実行に移されつつある。共同通信の報道では、国民総生産(GDP)の2割に達し、2020年度の国家予算を上回る規模になった、4月7日閣議決定の政府の緊急経済対策について、財務省幹部は、「今は各国が支出拡大にかじを切り『赤信号、みんなで渡ればこわくない』で国債を増発しているが、ギリシャの財政危機もリーマン・ショック後の経済対策の結果として起きた」と不安を漏らす、と報じられている。

家計支援が頼りない、でも財政の懸念がある

   「いまの日本はすぐに結果や効果がもとめられる世情になっています。ゆっくり力を貯めて積み上げてとか、時間をかけてよく考えてとか、みんなの気持ちを思いやってということは、逆に能力のない証拠だと誤解されがちです」と、日本人の視野の短期化に警鐘を鳴らした、故大瀧雅之・東京大学社会科学研究所教授(マクロ経済学)の言葉をあらためて思いだす。この言葉が出てくる「アカデミックナビ 経済学」(勁草書房)は、昨年6月の当コラムで紹介した。

   経済危機に国が財政拡大して対処するというのは、どんな経済学の教科書にも書いてある処方箋だが、経済がよい時期には、毎年の国債発行額を減らしたり前倒しで返済したりして、国債残高(借金額)を減らして、財政を健全化してあるということが前提にある。最近手厚い支援策が取り上げられるドイツがその実例だ。

   前出の大瀧氏の著作では、「少ない人口で多くの国債を保有することは極めて困難であると予想されます」として、急速な人口減少にある日本の困難を指摘していた。今回の経済対策について、家計支援が頼りないという批判が噴出しているが、将来のことを考えれば、財政の底が抜けることも懸念しないといけないという日本の苦しい台所事情が窺われる。

   やむなく一人で過ごす時間が多くなるこのいま、少し長めの視野を回復することには大きな意義があるのではないだろうか。そのためのお勧めの本が、この3月に刊行された「日本経済の再構築」(小黒一正著 日本経済新聞出版社)である。いまや中堅の経済学者として活躍を続ける小黒氏の著作については、このコラムでも何度か紹介してきたが、本書はこれまでの著者の旺盛な知的活動を整理した現時点での現状分析と総括的な提言からなる。また、それぞれの章に配置されたコラムを読めば、本文の記述の裏に、学術研究の豊富な蓄積があることがわかる。

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