やっぱり紙が好き 辻村深月さんは歳月がもたらす黄ばみさえ愛でる

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「お嬢様」のたしなみ

   25ans(ヴァンサンカン)はフランス語の「25歳」。現在の版元はハースト婦人画報社、今年で創刊40周年となる「お嬢様雑誌」の草分けだ。

   5月号の紙特集では、「読む喜び、書く楽しさ」を副題に、図書館や本、手紙、手書きメモなどを14ページにわたり取り上げた。辻村エッセイはその冒頭を飾っている。

   誌名は「25歳」でも読者層の中心は30代とされ、ゴージャスな小物や結婚情報だけでは飽き足りない。コンテンツにはそれなりの「知」や「才」が求められる。それを読者に説くには、なるほど、少し年上の同性が適役かもしれない。辻村さんは同誌と同じ1980年生まれの40歳。ちなみに直木賞を受けたのは32歳の時で、山梨出身の受賞は林真理子さん以来、26年ぶりだったという。

   私も物書きの端くれ、それも「紙が命」の新聞社出身だ。ただ、印刷インクの匂いや輪転機の音には多少のノスタルジーがあっても、紙そのものへの思い入れはさほどでもない。

   本の虫でも、多読でもなかった。だから嬉しいことに、この年になっても読むべき小説やノンフィクションの名作が内外に山ほど残っている。新型コロナの騒動が落ち着いたら、心置きなく紙と親しむことにしよう。

冨永 格

冨永格(とみなが・ただし)
コラムニスト。1956年、静岡生まれ。朝日新聞で経済部デスク、ブリュッセル支局長、パリ支局長などを歴任、2007年から6年間「天声人語」を担当した。欧州駐在の特別編集委員を経て退職。朝日カルチャーセンター「文章教室」の監修講師を務める。趣味は料理と街歩き、スポーツカーの運転。6速MTのやんちゃロータス乗り。

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