つながりへの憧れ
山水郷への若い世代の社会的移動は2000年以降の現象であるが、その背景には三つの力が働いている。
新幹線と高速道路の延伸で全国が近くなったうえに規制緩和で安価な航空券やバスが登場した。南房総が二地域居住のメッカになったのは、アクアラインの料金が一気に800円に下がったことが大きい。スマホとSNSの登場により、どこにいてもだれかと繋がっている実感がもてるし、山水郷の発信力も高まっていることは隠岐や徳島県神山町にみるとおりだ。
受け入れる山水郷の女性の力も大きい。男たちの仕事がなくなり、こどもの数が減る中で、30から40歳代の女性、そして、60歳以上の女性が、外からの訪問者や移住者の受け入れに大きな力を発揮している。
もっとも大きな力は、都市に住む若者の意識の変化だ。自分が使っていないものを他人に使ってもらう「互恵的消費」とも呼ぶ現象が起きている。こうした互助の消費活動は、山水郷では古くからおこなわれている慣習であり、そこにはお金のやりとりはないものも多い。山水郷をまもるために、草刈り、道の補修、落ち葉拾いなどさまざまな作業があるが、そうしたことも、若者たちには苦労どころか生き生きとした日々の魅力になっている。
四国の愛媛や徳島には、山間の集落がたくさん残っているが、おいしい水、自家製の茶や野菜、調味料など四季折々の花の美しさと相まって、いつ訪れても心が洗われる心地がする。そうした実体験を通して、山水郷に未来を託す次の世代が着実に増えていくだろう。
ドラえもんの妻