新型コロナ禍 橘玲さんは「不安を感じやすい人」を温かい目で見守る

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みんなちがって...

   2月の終わりごろから、雑誌のコラムは新型コロナで持ち切りだ。「感染率」は5割を超えるかもしれない。長期連載の橘コラム(上記で423回目)も例外ではない。もともと時事問題に敏感な連載だから、むしろ当然である。

   非常時にはいろんなものが見えてくる。リーダーの胆力や覚悟、国民の規範意識と道徳心、そして個々人の隠れたキャラクター。橘さんは、感染症への対応の違いを、石器時代から人類が継いできた「生存のための遺伝子」をヒントに読み解いていく。

   私はどちらかといえば呑気なほうで、大抵のことは「なんとかなるだろう」と考える。しかも目先の快楽に弱い。間違いなく、茂みの果実をさんざん食べた挙句ライオンに喰われるタイプである。ほとんど手遅れだが、そういう人間が人生を穏やかに全うするには、逆のキャラクターと組むべきなのだろう。

   人類全体も同じことで、用心深いのもいるし、怖いもの知らずも混じる。金子みすゞではないが〈みんなちがって、みんないい〉。感染症から自然災害まで、あらゆる危機に見舞われても、集団の一定数は生き残るようにできているのである。

   トイレ紙の行列を嗤い続けているだけでは、いつか「紙ないじゃん」という猛獣に襲われるだろう。最悪の場合...だれも助けに来ない個室で。

冨永 格

冨永格(とみなが・ただし)
コラムニスト。1956年、静岡生まれ。朝日新聞で経済部デスク、ブリュッセル支局長、パリ支局長などを歴任、2007年から6年間「天声人語」を担当した。欧州駐在の特別編集委員を経て退職。朝日カルチャーセンター「文章教室」の監修講師を務める。趣味は料理と街歩き、スポーツカーの運転。6速MTのやんちゃロータス乗り。

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