英国で愛唱される「エルサレム」を書いたC・H・パリーはスペイン風邪の犠牲者

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コロナ禍にあえぐ今こそ必要な曲

   英国の誰もが誇りを感じるこの曲は、もちろん、当初の目的の通り、国難にあたっても演奏されることが多い曲です。上記エルガーが編曲して、ホールにパイプオルガンがなければ演奏できないオリジナルとは別に、管弦楽伴奏版を作ったことも、それに拍車を掛けました。欧州が「コロナ禍」にあえぐ今こそ、人々を勇気づけるためにこの曲が必要とされているのかもしれません。

   しかし、皮肉なことに、作曲者のパリーは、今からほぼ100年前に、全地球を覆ったウィルス感染拡大・・・人類史上もっとも死者の多かったパンデミック、第1次大戦によってアメリカから欧州に拡散し、参戦していなかったスペインで初期感染情報が出されたため「スペイン風邪」と呼ばれた、インフルエンザの大流行によって命を落としています。

    この曲を含めて、音楽が実際に演奏される機会である音楽会は、非常事態となった英国でも次々と中止されていますが、「エルサレム」は人々の心に生き続け、またいつの日か、高らかに演奏される機会を待っているはずです。

本田聖嗣

本田聖嗣プロフィール

私立麻布中学・高校卒業後、東京藝術大学器楽科ピアノ専攻を卒業。在学中にパリ国立高等音楽院ピアノ科に合格、ピアノ科・室内楽科の両方でプルミエ・プリを受賞して卒業し、フランス高等音楽家資格を取得。仏・伊などの数々の国際ピアノコンクールにおいて幾多の賞を受賞し、フランス及び東京を中心にソロ・室内楽の両面で活動を開始する。オクタヴィアレコードより発売した2枚目のCDは「レコード芸術」誌にて準特選盤を獲得。演奏活動以外でも、ドラマ・映画などの音楽の作曲・演奏を担当したり、NHK-FM「リサイタル・ノヴァ」や、インターネットクラシックラジオ「OTTAVA」のプレゼンターを務めるほか、テレビにも多数出演している。日本演奏連盟会員。

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