コロナ禍にあえぐ今こそ必要な曲
英国の誰もが誇りを感じるこの曲は、もちろん、当初の目的の通り、国難にあたっても演奏されることが多い曲です。上記エルガーが編曲して、ホールにパイプオルガンがなければ演奏できないオリジナルとは別に、管弦楽伴奏版を作ったことも、それに拍車を掛けました。欧州が「コロナ禍」にあえぐ今こそ、人々を勇気づけるためにこの曲が必要とされているのかもしれません。
しかし、皮肉なことに、作曲者のパリーは、今からほぼ100年前に、全地球を覆ったウィルス感染拡大・・・人類史上もっとも死者の多かったパンデミック、第1次大戦によってアメリカから欧州に拡散し、参戦していなかったスペインで初期感染情報が出されたため「スペイン風邪」と呼ばれた、インフルエンザの大流行によって命を落としています。
この曲を含めて、音楽が実際に演奏される機会である音楽会は、非常事態となった英国でも次々と中止されていますが、「エルサレム」は人々の心に生き続け、またいつの日か、高らかに演奏される機会を待っているはずです。
本田聖嗣