SNSの「いいね」に相当?
〈七色の虹が 消えてしまったの シャボン玉のような あたしの涙...〉
「ラブユー東京」をご存じだろうか(私はすぐに歌えます)。懐かしく口ずさむ同世代も多いだろう。1968年から集計が始まったオリコンシングルチャートの、記念すべき初代1位(1月4日付から3週連続)でもある。
ムード歌謡はハワイアンやジャズ、ラテンなどをベースに、ナイトクラブやキャバレーなど夜の街に生まれ、育てられた楽曲である。ご当地ソングとの相性もいい。
和田弘とマヒナスターズ、鶴岡雅義と東京ロマンチカ、内山田洋とクール・ファイブ、敏いとうとハッピー&ブルー、秋庭豊とアローナイツなどなど、1960年代から百花繚乱、多くのグループが競った。リーダーの氏名を冠した楽団のようなネーミングも特徴だ。
堀井さんは、有線放送というキーワードを手がかりに、夜の女たちが支えた新興グループの成功物語をアナログ感たっぷりにまとめている。「ラブユー東京」は甲府市のホステスたちから火がついたという。電話によるリクエストは、今ならSNSの「いいね」に近いか。「いいね」はタダだが、女性たちは財布の硬貨を公衆電話に投入した。
たかが10円、されど10円。半世紀前、官製ハガキがまだ7円の時代である。
冨永 格