「曲がどうなっても根っこは変わらないな」
彼らが20数年の中で変わっていったことの一つに「歌の大きさ」があった。町内会の伝言板のような身近な出来事や友達に伝えたいこと。路上で歌っている中で感じたこと。そんな個人的な歌が、成長するにつれて少しずつ大きくなった。
例えば「故郷」であり「地球」であり「世界」、更に、「命」である。そうした根源的な視点も踏まえた応援歌。前作の「BIG YELL」は、そんな到達点のようなアルバムだった。
新作は、一曲目の「SEIMEI」こそ「命」をテーマにしているものの、二曲目は彼らの地元横浜の代名詞のような「チャイナタウン」。3曲目は「花咲ク街」だ。カレーをテーマにした8曲目の「イマサラ」は、インドの街を連想させる。曲の合間には「Pinky Town」「Yellow Town」「Green Town」というインタールードも入っている。アルバムの最後は、一番最初に出来たという「公園通り」。横浜伊勢佐木町の路上出身の彼らが初めて東京でワンマンライブをした場所なのだそうだ。
デビュー22年。やはりオフィシャルインタビューで二人はこんな話もしている。
岩沢「弾き語りとして作って演奏もした曲を、さらにリアレンジ して曲をグレードアップさせるっていうその過程に、ゆずが歩んできた道のりを感じてもらえると思うし、僕らとしても、曲がどうなっても根っこは変わらないなっていう強さの部分を再認識しましたね」
北川「僕は青春時代が良かったとは必ずしも思ってなくて(笑)。 初期の曲も青春時代が終わった後に書いたものが多いんです。もう戻れないなっていう感覚で。でもその時は心のどこかで戻りたいっていう気持ちがあったんでしょうね。前に進んでいく恐怖心みたいなものもあっただろうし。でも今はそういう恐怖心なんてまったくない」
どうなっても根っこは変わらない。前に進んでゆく恐怖心は全くない。それは、いつでも「街」に帰ることが出来るという確信があるからではないだろうか。
「都会」でも「田舎」でもない「街」。そこにはいつもあの日の自分とこれからの自分が息づいている。そこに暮らしている人たちとともにだ。
(タケ)