体験的ジェンダー論
まだ低い女性の社会的地位、なお残る「男は度胸、女は愛嬌」、奥様は機械オンチの先入観...色んなことを考えさせるエッセイである。
冒頭の「チコちゃん」は、素朴で身近な疑問をテーマに、うまく答えられない芸能人らにチコちゃん(永遠の5歳)が「ボーっと生きてんじゃねーよ!」と喝を入れるバラエティ番組。2018年春に放送が始まった。
電話に応答する女性の声が高くなるのは「小さく無害な存在と思わせるため」というチコちゃんのご託宣に、山崎さんは大意「自分が子どもの頃はそうだったが、最近は逆ではないか。少なくとも私は普段より低い声を出す」と反駁する。そこから始まるジェンダー論は、自らの体験に基づくものだけにわかりやすく、説得力を伴う。
この社会に染みついた悪しき慣習。にこにこと受け流していたら、次の世代に引き継がれるだろう。「お客さんじゃなくて奥さんでもいいんですけど」。そう言ってしまう配送マンに、たぶん悪意はない。ないことが問題なのである。
冨永 格