電話の女性は声が高い 山崎ナオコーラさんが低音で男性と話すワケ

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体験的ジェンダー論

   まだ低い女性の社会的地位、なお残る「男は度胸、女は愛嬌」、奥様は機械オンチの先入観...色んなことを考えさせるエッセイである。

   冒頭の「チコちゃん」は、素朴で身近な疑問をテーマに、うまく答えられない芸能人らにチコちゃん(永遠の5歳)が「ボーっと生きてんじゃねーよ!」と喝を入れるバラエティ番組。2018年春に放送が始まった。

   電話に応答する女性の声が高くなるのは「小さく無害な存在と思わせるため」というチコちゃんのご託宣に、山崎さんは大意「自分が子どもの頃はそうだったが、最近は逆ではないか。少なくとも私は普段より低い声を出す」と反駁する。そこから始まるジェンダー論は、自らの体験に基づくものだけにわかりやすく、説得力を伴う。

   この社会に染みついた悪しき慣習。にこにこと受け流していたら、次の世代に引き継がれるだろう。「お客さんじゃなくて奥さんでもいいんですけど」。そう言ってしまう配送マンに、たぶん悪意はない。ないことが問題なのである。

冨永 格

冨永格(とみなが・ただし)
コラムニスト。1956年、静岡生まれ。朝日新聞で経済部デスク、ブリュッセル支局長、パリ支局長などを歴任、2007年から6年間「天声人語」を担当した。欧州駐在の特別編集委員を経て退職。朝日カルチャーセンター「文章教室」の監修講師を務める。趣味は料理と街歩き、スポーツカーの運転。6速MTのやんちゃロータス乗り。

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