高齢化の影響が社会保障制度を直撃
この一連の人口動態の変動は、スタートすれば、ある程度長期に亘って予測がつく。他方、人口問題というと、超長期の課題のように考えてきたが、本書を読むと、実はかなり短い期間で変動し、影響も出てくることが実感される。また、最終的な人口増加率が減少局面になるか安定局面になるかで国家の維持という面では大きな違いが出る。そこは人口置換率が安定的に保てるかどうかの水準に依存する。
日本はどうか?産業革命とベビーブーム世代という二つの波の影響をアジアで初めて経験し、大国への仲間入りを成し遂げた。その後の高齢化・人口減少は、先行した欧米諸国を抜き、世界の、そして人類の先頭に立って経験しているのである。戦後構築した我が国の社会保障制度は年齢基準に大きく依拠しており、高齢化の影響をダイレクトに受ける。戦後にスタートした「サザエさん」に登場する定年間際の波平さんは、御年54歳の設定だ。我々は思うより若返っている。65歳から年金生活という人生モデルも変わって当然だろう。全世代型社会保障改革という枠組みの中で持続可能な社会保障制度を構築できるか、全人類的課題だと考えると、行政官としてもやる気が沸く。
経済官庁 吉右衛門