愚行と芸を切り分けて
この決めぜりふに続き、宮藤さんの「マジすか!」という言葉で本作は終わる。自分が宣伝している商品を店に置いてくれたことへの感謝と、自分のカオがそこまで世間に知られている現実への狼狽。二つがブレンドされた正直な「マジすか!」だろう。
私も長らくメディアで仕事をしてきたが、幸いそれほど顔を知られていないという意味では「無名」のカテゴリーに入る。だから、新聞社をやめてからは晴れて自由人である。それに比べ、名も顔も売れた人たちの苦労と緊張は大変なものだと思うのだ。
宮藤さんは、制作者の立場から「日本だと謹慎、すなわち仕事を奪われる事が罰と見なされる。やっぱ芸能の仕事ってラクして儲けてると思われてるんだろうか」と嘆く。
昨今は、何かあれば未公開の作品や番組がお蔵入りの危機に晒され、昔の出演作にまで累が及ぶことさえある。作品を丸ごと葬るなど、私だって納得いかない。
もちろん俳優だろうが芸人だろうが、有名人だからといって甘やかすことはない。ナントカは芸の肥やしと許される時代でもなかろう。ただ、愚行と「芸」は可能な限り、それがオンリーワンならなおさら、ギリギリのところまで切り分けて評価したい。
冨永 格