「急行」や「快速」に乗っているはずなのに、あまり速さを感じない。通勤・通学電車を利用していて、そんなことを思う瞬間はないだろうか。
ツイッター上で話題になった、あるイラストを見れば、いつも使う路線の「優等列車」(急行、快速など普通列車より停車駅の少ない列車)が他の路線と比べて速いのか、それとも遅いのか、一目瞭然だ。
原付の法定最高速度並みのスピード
イラストは、カオストレイン(@chaostrain)さんが調査し20年2月6日に投稿したもの。首都圏、関西、名古屋それぞれの主な通勤路線で、朝ラッシュ時に走る複数の電車の「平均表定速度」を比較している。
表定速度とは、走行距離を運転時間(走行時間と停車時間の総和)で割ったもので、運転時間は実際の時刻表をもとに算出した。一つの路線を複数区間に分けて調べた中で、最も表定速度が速い区間が対象だ。優等列車でも「急行」「準急」など複数の種別がある路線では、一定程度の通過駅がある種別を対象に選んだ。
ここでは首都圏の結果を見てみよう。私鉄の中で最も遅かったのは、東急大井町線の急行(溝の口→大井町)。なんと、時速32.3キロメートルだ。一般道における50cc以下の原動機付自転車(原付)の法定最高速度が30キロと考えれば、その「遅さ」が分かる。
他にも東急目黒線、東急田園都市線、東急東横線、京王線、京王相模原線が時速30キロ台にとどまり、東急と京王の2社が下位を独占した。
一方、上位には東武スカイツリーライン、京成成田スカイアクセス、つくばエクスプレスの3路線が名を連ねた。最も速いつくばエクスプレスは時速69.7キロで、最下位の東急大井町線とは2倍以上の開きがある。
JR東日本では中央線のみ時速40キロ台だったものの、埼京線、総武線快速など他の路線はいずれも50~60キロ台を記録。私鉄よりも軒並み速い結果になった。
東急と京王が遅い理由を分析
「純粋に、いつもの通勤・通学路線がどれくらいの表定速度で走っているのかを知ってもらえたら嬉しいです」
そう語るのはイラスト制作者のカオストレインさんだ。グラフィックデザイナーが本業で、ツイッターでは「主要駅からの終電マップ」など、趣味で作った鉄道関連のイラストを投稿している。今回のイラストは同僚との会話中、いつも使う通勤電車の「遅さ自慢」が話題になったのを機に制作したという。
ところで、東急と京王の路線はなぜここまで遅いのだろうか。カオストレインさんは、前を走る列車が詰まる「ノロノロ運転」の発生が原因だと分析する。
「東急と京王は長距離の複々線(線路が上下2本ずつあり、普通列車と優等列車とが別の線路を走れる)区間がなく、スピードを出しづらい環境にあります。優等列車の停車駅も多い。駅間の距離は非常に短く、各駅停車の本数が多いため、前を走る各駅停車をなかなか追い越せないのも大きな要因です」
一方、私鉄の上位3路線は下位の2社とは対照的な環境だとしている。例えば東武スカイツリーラインは、関東の私鉄で最長の複々線区間を持ち、短い間隔で優等列車を走らせる余裕があると指摘。成田スカイアクセス、つくばエクスプレスの両線は駅間が長く、スピードが出しやすいことを高速度の要因に挙げた。
また、全体的に私鉄よりもJRが速い理由については「(私鉄と比べ)駅間距離が長く、スピードを出しやすい」ことが要因だと分析する。JRの中でも中央線が遅いのは「複々線区間が短く、今回の対象区間『八王子→新宿』では快速列車の通過駅がほとんどないことから、数値上はかなり遅い結果となってしまいました」と説明した。