「自分たちの歌がない」
音楽から「時代」が消えた、と書いた。
でも、「歌は世に連れ」というように、その時代の歌には、その時々の世相は色濃く反映している。
URCが発足した1969年は戦後史の転換点だった。1月に東大安田講堂が陥落し、全国の大学・高校に展開されていた学園闘争が終息、8月に岐阜県中津川市の椛の湖畔で「第一回全日本フォークジャンボリー」が行われた。アメリカでウッドストックが行われる一週間前だ。政治から音楽へ、という流れが始まった年だ。行き場を失った若者たちの「自分たちの歌がない」という不満が、「自分の歌を」という新しい動きにつながって行った。
つまり、URCの音楽は、50年前の若者たちの「どう生きるか」という模索の産物でもあった。
URC50th三枚組「青春の遺産」はそれぞれのDISCに選曲のテーマがある。DISC1は「人生と暮らしの歌」、DISC2が「旅と街の歌」、DISC3が「愛と平和の歌」だ。
DISC1に収められている、日本語のロックの元祖・はっぴいえんどの「春よ来い」は、バンドを組んだばかりの当時の彼らのドロップアウトの歌だ。加川良の「下宿屋」は、裸電球の下宿屋での仲間とのことを歌っている。その登場人物の一人でもある高田渡は、「豊かさとは何か」を問い続けた詩人だ。彼らが問いかけたことが、今の若者たちにどう響くか。斎藤哲夫の「悩み多き者よ」は、今の受験生にこそ聞いてほしいと思う。
DISC2の「旅と街の歌」は、ヒッチハイクで旅をしながら歌っていた「旅の詩人」・友部正人の「まちは裸ですわりこんでいる」で始まっている。全国が東京化してゆくことへの怨念のような、青森出身の三上寛の「青森県北津軽郡東京村」は今の日本の姿だろう。大人になるための第一歩が旅に出ること、というのは50年前も今も変わらないはずだ。DISC3の「愛と平和の歌」は、「戦争と愛の歌」と言い換えることも出来る。「戦争を知らない子供たち」が歌った「愛と戦争」はまさに21世紀の歌だ。
時代は変わる。歌った人は逝ってしまう。でも、歌は残って行く。50年前の若者たちの「どう生きるか」という歌が、令和の若者たちにどう届くか。
URC50周年。ここに収録されている人たちの多くがすでに鬼籍に入ってしまった。「遺産」というタイトルがついているのは、そういう理由もある。
青春は短い。でも、そこでの喜怒哀楽は永遠なのかもしれない。
(タケ)