今の時期、怖いのは新型コロナウイルスによる新型肺炎やインフルエンザだけではない。ノロウイルスの流行も心配だ。厚生労働省の公式サイトには「ノロウイルスによる感染性胃腸炎や食中毒は、一年を通して発生していますが、特に冬季に流行します」とある。おう吐、下痢、腹痛などの症状を引き起こし、患者のふん便や吐しゃ物には大量のウイルスが排出される。
もし衣類などをおう吐物で汚してしまった場合、注意すべき点がある。汚れた品物をそのままクリーニング店に持ち込んでも、対処してもらえないことがあるのだ。
「指定洗濯物取扱施設」しか引き受けられない
神奈川県クリーニング生活衛生同業組合の公式サイトには「一般のクリーニング店では法律上嘔(おう)吐物や汚物のクリーニングは出来ません」とはっきり書かれている。根拠はクリーニング業法の第3条第3項第5号だ。
「伝染性の疾病の病原体による汚染のおそれのあるものとして厚生労働省令で指定する洗濯物を取り扱う場合においては、その洗濯物は他の洗濯物と区分しておき、これを洗濯するときは、その前に消毒すること。ただし、洗濯が消毒の効果を有する方法によってなされる場合においては、消毒しなくてもよい」
吐しゃ物や、し尿といった汚物は「汚染のおそれのあるもの」に該当し、洗濯前の消毒が義務付けられているのだ。感染症によるものだけでなく、酒の飲み過ぎなどでおう吐した場合も同様だという。
クリーニング店には「消毒のための設備を有する店」と「有さない店」がある。汚物が付いた衣類は前者、すなわち「指定洗濯物取扱施設」に持ち込む必要がある。店舗の場所は原則、地元の保健所に問い合わせるのがよい。
なお消毒設備のないクリーニング店でも、「自宅で洗浄、消毒したものであればクリーニングを受け付ける場合もある」そうだ。
感染対策したうえで「常温水」使ってもみ洗い
自宅でできる洗浄方法を調べた。まず、汚物処理は感染しない対策を取りながら行うことが大前提だ。厚生労働省の公式サイト「ノロウイルスに関するQ&A」にも「患者のふん便や吐ぶつを処理する際に注意すること」や「吐ぶつやふん便が布団などのリネン類に付着した場合」の対処方法が紹介されている。
そのうえでだが、一般クリーニング業のヨンマルサン(山梨県南都留郡)の公式サイトは「洗濯機でがしゃがしゃ洗う」のではなく、風呂場で常温水を使って汚れた箇所のもみ洗いを推奨している。温水の方が汚れ落ちはいいが、衣類から色が抜けたり、風合いが変わりやすかったりするため注意が必要だ。
もみ洗いで固形物などを最低限取り除いたうえで、脱水機を使わずハンガーなどにかけて自然に水切りする。水が垂れない程度になったらビニール袋に品物を入れてクリーニング店に持ち込むが、その際「おう吐物で汚れている」ことをしっかり伝えるのがポイントだ。