お笑い芸人でマラソンランナーの猫ひろしさん(42)。2016年のリオデジャネイロ五輪ではカンボジア代表として男子マラソンに出場し、全体で2番目に遅いタイムながら完走を果たした。
2020年は母国・日本で開かれる東京五輪に「カンボジア人」として出場を目指す。J-CASTトレンドがその胸中を聞いた。(聞き手はJ-CASTトレンド編集部・佐藤庄之介)
他のカンボジアの選手も応援してくれた
――猫さんと言えば、リオ五輪のゴール後に観客から受けた大歓声と、その後のコミカルなパフォーマンスが印象的です。あの時はどんな気持ちだったのでしょうか。
猫 ビリから2位だったのは悔しかったけど、それでも観客が平等に称えてくれたのは嬉しかったですね。ただ、ゴールした後は芸人(笑)。盛り上げられてよかったです。
――当時、カンボジア代表として五輪に出ることをどう思っていましたか。
猫 僕がカンボジア代表として出ることで(他の選手の)枠が減ることに対しては、複雑な気持ちがありました。それでも、できることは一生懸命やって、リオでは正々堂々やると決めていた。他のカンボジアの選手も応援してくれたし、終わって(カンボジアに)帰ってきたときも歓迎してくれた。前を向いていてよかったと思います。
――日本では「五輪のために国籍を変えたのか」という声もありましたが、気にしていましたか。
猫 全然気にしていなかったです。一番迷惑をかけたのは(批判する)その人たちじゃない。迷惑をかけるとしたらカンボジアの選手たち。でもその選手たちは今も友達だし、彼らも自分が戦って勝ったところを見ているからこそ、自分を応援してくれている。日本の人たちがカンボジアに来て、その状況を見た上で批判しているなら別ですが、それ以外の声は今も気にしないようにしています。
「今もカンボジア人で、これからもカンボジア人」
――リオ大会から4年が経ちますが、カンボジアのマラソン界に変化は感じますか。
猫 僕と同時期に走っていた選手がコーチになったり、下の世代の若手が少しずつ育ってきて、いい記録を出していますね。彼ら(若手)はもちろんライバルですが、僕が日本で練習しているのを見て「その練習方法でやりたい」という選手もいました。それを実践した選手が速くなっていったのは、仲間として嬉しかったですね。
――ご自身の変化についてもうかがいます。現在42歳、肉体の衰えを感じることはありますか。
猫 トイレが近くなりましたね。ひどい時は夜3回くらいトイレに行きます」
――(笑)競技面での変化はないですか。
猫 あっ、競技面ですか(笑)。やっぱり疲れは取れにくくなりましたね。以前は仕事が終わった後に40キロ走をやっていたんですが、そういうのはやめました。今はキチッと休んで、キチッと走って、キチッと食べて、というスタイルです。
――生まれ育った国・日本での五輪開催をどう思いますか。
猫 「ついに来たな」という感じですね。僕の育った国ですから。2013年に開催が決まったときは、IOC(国際オリンピック委員会)の誰かが俺のことを調べてるんじゃないかと思いました(笑)。
――もし東京五輪に出られるなら、日本代表として出たいという思いはありますか。
猫 それは考えたことがないですね。今もカンボジア人で、これからもカンボジア人。国籍の変更を受け入れてもらったからには、カンボジア人として出ることしか考えていません。
――最後に、東京五輪に向けた意気込みをお願いします。
猫 まずは3月1日の東京マラソンで自己ベストを出すことが目標です。そこで結果を出せば、その先の五輪代表も見えてくるかもしれないので、笑顔でゴールできるよう「猫まっしぐら」で頑張ります。