ゆったり味わい深いアポリネールの詩 歌曲の達人プーランクが曲を付けた「ホテル」

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「ぶっ飛んだ」表現の詩に魅力を感じた

   本質的に外国人であったアポリネール・・・・絵画におけるピカソも、パリで活躍しましたがスペイン人でした・・・と対照的に、プーランクはフランスの作曲家には珍しい、「パリのど真ん中の出身」でした。パリは、国外からやってきた人たちによって革新性が生まれ、さらにそれがパリの活力になる・・というパターンがあるのですが、生まれも育ちもパリのプーランクは、若いころから「異邦人」アポリネールの詩、いわば「ぶっ飛んだ」表現の詩に魅力を感じ、曲をつけてゆきます。

   「ホテル」は、アポリネールの詩に曲を付けた「月並み」という歌曲集の中の1曲です。

   鳥かごの形をしたホテルの一室で、主人公がリラックスしているだけ・・・歌詞によると、「太陽が腕を突っ込んでくる」とありますから、直射日光でその部屋は暑い様子です。そして、その太陽の熱でタバコに火をつけたい、仕事なんてしたくない・・・という、ほんとうにシンプルかつ「だらっと」した内容の歌詞なのです。まあ、エアコンがない時代の、日光が降り注ぐ部屋の暑さは、かなりなものかもしれません。それを一編の詩にしてしまうアポリネールもアポリネールなら、そこに、大げさなぐらいゆったりと、味わいが深く、どこかけだるさを感じる和音を重ねてゆくプーランクの腕前も見事です。

   演奏時間わずか2分に満たない歌曲ですが、聞いた後に、なんとも味わい深い雰囲気をじんわりと残してくれる不思議な魅力に満ちた1曲です。

   「月並み」の中には、「パリへの旅」という、旅へのあこがれを歌い上げた曲や、さらに人生を感じさせてしまう「すすり泣き」といった曲もあるのですが、彼の歌曲はどれもが魅力的なため、また機会を改めてそれぞれご紹介したいと思います。

本田聖嗣

本田聖嗣プロフィール
私立麻布中学・高校卒業後、東京藝術大学器楽科ピアノ専攻を卒業。在学中にパリ国立高等音楽院ピアノ科に合格、ピアノ科・室内楽科の両方でプルミエ・プリを受賞して卒業し、フランス高等音楽家資格を取得。仏・伊などの数々の国際ピアノコンクールにおいて幾多の賞を受賞し、フランス及び東京を中心にソロ・室内楽の両面で活動を開始する。オクタヴィアレコードより発売した2枚目のCDは「レコード芸術」誌にて準特選盤を獲得。演奏活動以外でも、ドラマ・映画などの音楽の作曲・演奏を担当したり、NHK-FM「リサイタル・ノヴァ」や、インターネットクラシックラジオ「OTTAVA」のプレゼンターを務めるほか、テレビにも多数出演している。日本演奏連盟会員。

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