出張先でホテルに泊まったら、エアコンの風や乾燥による影響で翌朝、体調不良になってしまった――こんな経験はないだろうか。
宿泊した部屋で、温度や湿度に左右されず快適な朝を迎えたいと望む人には嬉しいホテルが、福岡市博多区にある。日本初、館内にエアコンが1つも存在しない「グレートモーニング」だ。ホテルでは絶対に加湿器が手放せない、"乾燥アンチ"の記者が2020年1月28日、実際に宿泊を体験した。
常に最適な温度と湿度、調整の手間なし
エアコンゼロなら、館内は寒いのではないか。恐る恐る足を踏み入れたが、ロビーの気温は驚くほど快適だった。その秘密は、ついたてのような見た目をしている「光冷暖システム」にある(写真2)。独自研究を重ねた高性能冷暖パネルに、室外機で冷やした、あるいは温めた循環水を流し、遠赤外線の放射を利用して冷房・暖房と同じ役割を果たす。グレートモーニング社の二枝たかはるさんは、福岡でコンサートや講演、大会などを控えた「勝負に来る人」に利用してほしいと語る。
「グレートモーニングは『最高の朝を迎えるための眠り』にこだわっています。風なし、乾燥なし、ホコリなしの『光冷暖システム』の導入によって、常に静かで快適な環境を提供します。また全室の湿度が大体45~55%に保たれており、自分でこまめに調整する手間もありません。ストレスなく眠って大切な日に備えてもらえるよう、京都の老舗寝具メーカーと共同開発した不毛布団やマットレス、竹素材のデザイナーズベッドも用意しています」
静かなのに落ち着くリラックス空間
同ホテルは全25室。記者が泊まったのは、うち8室を占めるデラックスダブル(写真1)だ。第一印象は「無音」。宿泊日は悪天候だったが耳を澄ませても外の雨音が聞こえず、冷蔵庫の音もない。光冷暖システムは稼働しているのかわからないほど静かだが、手を近づけるとほんのり暖かい。また確認した限り、壁や机上に時計がないため、すっかり時間を忘れて過ごしてしまった。
記者は「寝ようとしているのに、ふと何かの音が気になって眠れなくなる」ことがあるが、今回は知らぬ間に寝入っていたようだ。
翌朝は寝不足を感じることなく、すんなり起きられた。喉の痛みや起き抜けの寒さは感じない。上に何も羽織らず、ルームサービスで運ばれてきた朝食をパジャマのままいただいた。和食と洋食、好きな方を選ぶことができ、和食は72時間発酵させた玄米おにぎりとみそ汁を、洋食は博多の老舗洋菓子店「チョコレートショップ」がグレートモーニングのためだけに手掛けたクロワッサンなどを楽しめる。
朝食後、改めてロビーや廊下、エレベーター内、客室を注意深く歩いてみたが、温度変化を感じない。二枝さんによると「ホテルの環境を気に入って、自宅に光冷暖システムを導入する人もいる」そうだ。念のためにと持参したハンディー加湿器の出番はなかった。