「性を表通りに、誰もが楽しめるものに変えていく」。こうしたビジョンのもと、アダルトグッズの製造・販売を行っているTENGA(東京都港区)。公式ツイッターは8.8万人のフォロワーを抱える、人気アカウントのひとつだ。
扱っているのは、性にまつわるセンシティブな商材だが、タイムラインを見ていても下品な印象はない。担当者は、意識してそう見せているのか。
「1日の半分くらい、ツイッターに時間を使っていいよ」
【TENGA公式】TENGAが展開する新商品やイベントの情報を画像付きで発信するほか、大好きなカレーや音楽グループの話題もゆるく呟き、フォロワーと活発にコミュニケーションをとっている。アカウント開設は2010年6月で、現在の担当者は2代目として18年9月から運用中。
担当者は広報宣伝部宣伝チーム社員。普段は新商品リリース時のイベント企画・運営など、商品宣伝にまつわる業務を行っており、なかでもツイッターは「かなり労力をかけている仕事」。できるだけタイムラインを見て情報収集したり、エゴサーチでユーザーの投稿を探してRTしたり、じっくりと運用に取り組んでいるという。
「商材の兼ね合いで表立って広告を打つことが難しい当社にとって、ユーザーに直接情報を届けることができ、交流も図れるツイッターは非常に有用なツールです。初代から運用を引き継いだ当初、『マニュアルはないから自由にやってね。1日の半分くらい、ツイッターに時間を使っていいよ』と言われたほど(笑) 。同僚は協力的で、チャットツールを介してTENGA利用者の口コミツイートURLを送ってくれたり、ネタになりそうな情報を会議で共有してくれたりしています」
「求人広告」スペースとしても大いに活用している。以前、ツイッターで反響を呼んだ面白いフレーズを模倣する形で19年7月にこんな求人募集をかけた。
「TENGAで働いてると福利厚生で『TENGA支給』があるから、ちょっと嫌なことがあっても『まあ家に帰ればめっちゃTENGAあるしな」ってなるし、むかつく人に会っても『そんな口聞いていいのか?私はTENGAとよろしくやってる身だぞ』ってなれる。戦闘力を求められる現代社会においてTENGAで働くことは有効」
結果、8000件を超えるRTがあった。こうしたユニークな投稿がフォロワーに好意的に受け入れられ、実際に求人への応募も複数あったそうだ。
下品にならないように「間接的な表現」心がける
運用開始から2年半弱が経った今でこそ「ゆるく楽しく」ツイートしているが、5万フォロワーがいる状態でバトンを受け取った当初は「やってはいけないこと、やらなければいけないこと」などの決まりがないせいで、かえって何を呟けばいいかわからなかったという。
「ひとまず『毎日決まった時間に挨拶ツイートしては』と社員から提案を受け、午後7時21分、語呂合わせで「0(オ)7(ナ)ニ(2)ー(1)」の時間に『#TENGA時報』を投稿することから始めました(笑)」
「他社の企業公式ツイッター担当者から『ネタに困ったら自分のことを話せばいい』とアドバイスをもらいました。前職でシステムエンジニアだった話や、カレーが好きだと呟いたこともあります。おかげでユーザーとの距離が縮まったと感じています」
しかし現在も「ツイート表現の仕方」は課題だと感じている。不特定多数のユーザーが投稿を目にするツイッターにおいて、成人向け玩具の情報を知りたくない人もいると念頭に置き、「商品やサービスに関する必要な情報はきちんと出しながらも『直接的』な言い回しは避けるようにしている」と話す。
「誰にとってもベストな投稿を狙うのは難しいですが、できるだけ下品にならないようにしたいと思っています。ただ、日頃そうした『間接的な表現』を心がけているせいか、何の含みも持たせていない投稿までも深読みされることがあるので、皆さんすごいなと思っています。例えば『キャンペーンの予約締切まであと何分』と告知するツイートに『締まりがいい』とリプライが来たり...(笑)」
いわゆる「アダルト方面」に攻めた投稿を期待されているのを感じてはいるそうだが、担当者は「今後もニオわせる程度に留めたい」と笑った。