途絶えることなく粉雪が舞う世界を表現
「粉雪」を含む「3つのピアノ曲」は1916年、つまり彼が北欧に戻ってからの作品です。欧州は第一次世界大戦の戦乱の中にありましたが、まだロシア帝国の支配が続いていた独立前のフィンランドでは、職業軍人以外は戦闘に巻き込まれることがありませんでした。
「粉雪」はまさにひたすら降り続ける雪のごとく、右手に現れた音形が繰り返し繰り返し演奏されます。そこに左手が透明感のある和音を加えていき、深い低音の和音を奏でた後、右手のメロディーは、同じ音形のまま、少しずつ変化していきます。最後まで、この「雪が降るモチーフ」は途絶えることなく、粉雪が舞う世界を表現します。どこか悲しげなのは、戦争のせいか、まだ独立前のフィンランドの嘆きか・・・わかりませんが、日本の我々が冬の雪に感じるような「そこはかとなくセンチメンタルな詩情」が感じられ、わかりやすく素敵な曲となっています。4分に満たない小曲ですが、雪の時期に聴きたい、可愛らしい曲です。
本田聖嗣