金融業の本来の役割
金融業が株主を優先する経営をする弊害を指摘するのも本書の特長である。仲介を使命とする金融業は、できるだけ安価に安全に資金を融通することが求められており、自らの企業価値や株価上昇を目標とするべきではない。しかしながら、金融の自由化後、株主を最優先する経営が強まり、金融サービスが利益を生む商品に変質してしまった。手数料収入以外に投機的な利益を追求するようになり、相場の乱高下が大きくなり、アジア通貨危機、リーマンショックを招くことにもなった。
公益資本主義において、金融業は3つのサービスを提供する使命があるという。新しい事業に資金を提供することは当然として、経営者や従業員のトレーニング、売れるまでマーケティングをサポートするハンズオン支援も必要である。著者は、アフリカ諸国の財務省・中央銀行とともに、マイクロ・ファイナンスを基本にした金融制度の枠組みを構築している最中だという。日本でも、株主資本主義の影響を受けない信金・信組が、まさにあるべき金融業として活躍することを期待したい。
ドラえもんの妻