タケ×モリの「誰も知らないJ-POP」
人間の第一印象がそうであるように、バンドやグループにとっても名前によるイメージというのはかなり強いものがある。良い名前はもちろん、変な名前だなあと思うのも忘れられない出会いになる。
そういう例でいうと、「雨のパレード」という彼らの名前を耳にした時は、それだけで好感を持ってしまった。ウエットの代名詞のような「雨」とマーチングバンドの陽気な行進を連想させる「パレード」の組み合わせ。日本的叙情と西洋的解放感。陰と陽の同居。雨の中でタップダンスするシーンが有名な50年代のアメリカのミュージカル「雨に唄えば」のようなミスマッチの効果。どんなバンドなんだろうという関心はそこからだった。
思うようなアルバムが完成
雨のパレードは福永浩平(V)、大澤実音穂(D)、山崎康介(G・SY)という3人組。結成は2013年。同じ鹿児島で別々のバンドを組んでいたメンバーが東京で結成した。リーダーの福永浩平が詞と曲を書いている。当時は4人組だった。メジャーデビューしたのは2016年。アルバムタイトルは「New Generation」。2017年に出た二枚目は「Change Your Pops」だった。日本語にすると「新しい世代」と「君のポップスを変える」というタイトルに彼らの姿勢が伺えないだろうか。
彼らに感じたのは、バンドの「楽器」に捕らわれない「音像」だった。ギターやベース、ドラムという個々のメンバーの演奏というよりバンド全体の音が醸し出す「像」。ロックやジャズ、ソウルという音楽のジャンルというより「音全体」のイメージ。それでいてメロディーは親しみやすく、歌詞には内省的で思索的な言葉が綴られている。
例えば、一枚目のアルバム「New Generation」の中の「Petrichor」には「僕の虚空は降り続いている雨でいっぱいになってしまった」「今にも崩れそうな世界だ」というような歌詞があった。バンド名になっている「雨」が、彼らにとってどういうイメージなのか。文学青年の名残を感じさせるそんな生硬な言葉も、音に対してのこだわりに現れているようだった。更に、二枚目のアルバム「Change Your Pops」の中の「Count me out」には「クールなふりして中指立てるさ」「本当は何もかも気に入らないんだ」というような歌詞もあった。
ただ、それらのアルバムには、そうしたこだわりが、彼らが求めている形で作品になっているようにも思えなかったのも事実だった。
それが変わった。2020年1月22日発売の彼らの4枚目のアルバム「BORDERLESS」には、そうした「やりたいこと」と「やれること」の間のギャップのようなものが感じられなかった。ようやく、彼らの思うようなアルバムが完成したように思った。