ねずみ年と夢の国 春風亭一之輔さんはミッキーをライバルと考える

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自身への叱咤激励

   若手の実力者といわれた一之輔さんも間もなく42歳。往時の勢いに円熟味を加え、寄席とメディアで大活躍。人気も実力もトップクラスである。

   師匠の高座は数年前に一度観ただけだが、噺の技術はもちろん、フリートークの面白さが印象に残った。臨機応変の回転の良さは、引用したコラムにもよく表れている。

   干支のねずみで何か書くとき、ディズニーランドへ展開するのはよくある話。一之輔さんが非凡なのは、十数年前の体験を己の芸道に引きつけて記している点だ。

   「表情は変わらなくとも、身体の動きだけで十分すぎるほどその感情を伝えてくる」着ぐるみの面々を、同じエンターテイナー(ライバル)と意識する。そして、徹頭徹尾お客を楽しませるプロ根性において自分は劣っているかもしれないと。だから楽しむ気にはなれない。そんな求道者に近い心情を吐露して、けれんがない。

   後半にはミッキーにまつわる思い出を並べ、オチはアトラクションの鳥たちへのエール。「ねずみに負けんなよ」は、自身への叱咤激励でもあろう。

冨永 格

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   当コラムは今回で100本目となりました。これまでに味わった100の文章は、計45誌から拝借したものです。雑誌別の引用回数は、多い順に週刊新潮(8)週刊文春(7)サンデー毎日、週刊朝日(各6)週刊現代、女性セブン(各4)週刊ポスト、週刊プレイボーイ、Tarzan、SPA!、クロワッサン、プレジデント(各3)...となります。引用作の筆者は男性が60本、女性が40本。登場数は最多でも2回で、計82人とばらけました。

   まさに人のなんとかで相撲をとるような連載ですが、引き続きご愛読ください。

冨永格(とみなが・ただし)
コラムニスト。1956年、静岡生まれ。朝日新聞で経済部デスク、ブリュッセル支局長、パリ支局長などを歴任、2007年から6年間「天声人語」を担当した。欧州駐在の特別編集委員を経て退職。朝日カルチャーセンター「文章教室」の監修講師を務める。趣味は料理と街歩き、スポーツカーの運転。6速MTのやんちゃロータス乗り。

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