「彼とは学生の頃からの付き合いで、気の置ける大事な親友なんです」
記者の知人は、先日結婚式に参列した際に新郎にこう紹介されたそうだ。気遣いの要らない親しい間柄を意味する「気が置けない」と言うつもりで、表現を誤ってしまったと思われる。ツイッターを見ても「多分『気の置けない仲間』の意味で『気の置ける』って言う人も多くて、めっちゃ気になるw」、「仲の良い友人のことを『気が置ける」と言っている人がいて』と誤用を指摘する声がいくつもある。
「やぶさか」は「物惜しみするさま」これを否定すれば
日本語の慣用句には複雑なものが多い。例えば「~ない」と否定しながら、ポジティブな意味を表す場合の表現だ。冒頭で触れた(1)「気が置けない」をはじめ、(2)「感謝の言葉もない」(3)「やぶさかではない」がある。
(1)を広辞苑(第七版)で引くと「気づまりでない。気づかいしなくてよい」と説明がある。その末尾には「近年誤って、気を許せない、油断できないの意で用いることがある」と誤用に関する指摘が見られる。(2)は感謝していないのではなく、むしろ「感謝の度合いが深すぎてうまく言い表せる言葉が見つからない」(weblio辞書より)時に用いる。 (3)は広辞苑(第七版)で調べると、「やぶさか」の項に以下の記述があった。
「物惜しみするさま けちなこと(中略)「...に――でない」などの形で ...する努力を惜しまない することに躊躇しない」
「やぶさか」自体がネガティブな意味を持つ単語のため「~でない」と打ち消されることで「物惜しみしない=躊躇しない」と、ポジティブな意味になる。