「正統」の脆さを説く文章はストレートに響いた
米国宗教・精神史上の著名人が並ぶ『反知性主義』(2015)に比べ、本書は堅く、すっと入りにくい個所もあった。また雑誌連載の再編成と、別の発表原稿等を合わせて一冊にしたものであるためか、終盤部分で主題のつかみにくさもあった。
しかしながら、「正統」の脆さを説く以下のような文章はストレートに響いた。感じるものがあれば、手に取ることを勧めたい。
「批判者たちは他者攻撃においては仲間意識を共有しても、その後に来るべき新たな秩序の形成をともに担うという段になると、とたんに腰が引けてくる。(略)ここには、伝統の意義を否定し、既存の制度を葬り、正統の権威を引きずり降ろした後に残る空虚さの予感がある」
「一つの社会に複数の中心を置いて権力を分散させ、特定の集団が覇権を握らないように配慮するのは、多元主義が培ってきた知恵である。こうしたチェック&バランスも、ポピュリストには鬱陶しいだけである」
厚生労働省 ミョウガ