2017年に誕生し、連日注目を浴び続けたジャイアントパンダ「シャンシャン」、愛らしい立ち姿で人気を集めたレッサーパンダの「風太くん」、2002年に多摩川にひょっこり現れたオスのアゴヒゲアザラシ「タマちゃん」、など、日本中にブームを巻き起こした動物は数多い。
2020年も、一世を風靡する動物は現れるだろうか。「キモカワいい」独特な風貌の「こびと」が登場する人気絵本「こびとづかん」で知られる絵本作家のなばたとしたかさんに予想してもらった。(聞き手はJ-CASTトレンド編集部・藤原綾香)
「気持ち悪いなあ」...でも顔立ちはシュッとしてる
――まず動物の中で、なばたさんが気になっている「ジャンル」を教えてください。
なばた ずばり「キモカッコいい」系です。ぱっと見は気持ち悪いのに、よく観察するとカッコよく思えたり、その逆に、第一印象はカッコいいのに図鑑でちゃんと見ると気持ち悪かったり...(笑) 。そういう動物が今後流行るのではと予想していますね。
――「キモカワいい」ならぬ「キモカッコいい」ですか(笑) 。例えばどんな動物でしょう。
なばた 今一番注目しているのは「テングザル」(写真2)です。名前の通り、天狗のような鼻をしているのが特徴で、鼻が大きいほどモテます。どうしても鼻にばかり目がいってしまって「気持ち悪いなあ」と思いがちですが、顔立ちは意外とシュッとしていますし、争いを好まない平和主義者なのがカッコいいです。
――では「第一印象はカッコいいのに、ちゃんと見ると気持ち悪い」動物は。
なばた 同じサル系になりますが、「マンドリル」ですね。鮮やかな赤と青の皮膚を持つ顔がとにかく印象的。あの顔が森の中にぼうっと浮かんでいる図を想像すると、それだけでカッコいいなあと思うのですが、改めて観察すると鼻がすごく長くて「何だこのシュールなビジュアルは」と驚かされます。そのギャップがいいですね!
――「サル」以外の動物だとどうでしょう。
なばた 金魚の一種で、頭がコブのようにボコボコしている「ランチュウ」(写真3)ですね。観賞用にと、交配や品種改良で人間に手を加えられて背びれがなくなり、形がいびつになって泳ぎづらそうなのに、それでもたくましく生きている。見た目は奇妙ですが、生き様はカッコいいので、個人的には「キモカッコいい」枠でブームが来ると考えています(笑)。
パグは見た目や仕草がおじさん
――一方、イヌやネコは相変わらずの人気です。なばたさんが20年に注目しているイヌやネコはいますか?
なばた ずばり「イヌタウロス」ですね!
――聞いたことがない動物ですが......。
なばた 僕が19年12月4日に発売した新作の漫画絵本「犬闘士イヌタウロス」に登場する、イヌと人を掛け合わせたような体をもつ架空の生き物です。単純に「カッコいい!」と思って描いたのですが、読者の反応を見ると「キモカッコいい」ジャンルのようです(笑) 。
――どんなところが魅力ですか。
なばた 何せイヌと人が混ざった生き物なので、人のような知能や言語を持ちつつも、イヌとしての本能(サガ)をどうしても忘れられないところでしょうか(笑) 。例えば主人公の「パグオス」はパグのイヌタウロスで、「犬闘士(けんとうし)」という強い戦士を目指して過酷な修行に挑む10歳の少年なのですが...鍛錬の中でボールを投げられるとつい追いかけてしまったり、穴を掘っておやつを隠そうとしてしまったり、「イヌ」であるがゆえの弱点克服に苦心するお茶目なシーンがあります。
――さまざまなイヌがいますが、なぜパグを主人公に?
なばた 僕がパグを飼っていて、パグ好きだからです(笑)。あまりイヌっぽくないというか、見た目や仕草がおじさんのように見えることがあるのがかわいくて。
――ちなみに、実在するイヌやネコで、今年イチオシを教えてください。
なばた もはや定番の犬種なので見過ごしがちですが、ブルドッグです。ブサイクなのにカッコいいという、パグにはない迫力と魅力があります。 ネコなら「スフィンクス」ですね。現在のモフモフブームとは真逆に位置するシワシワの毛がないネコなんです。名前といい、見た目といい気高そうでいて、どことなくはかなさもあり、カッコよくて好きです。モフモフではなく、シワシワも今後の動物のトレンドになるかも(笑)。
なばたとしたか
1977年、石川県生まれ。イラストレーター。2002年に開催された「GEISAI-3」で毎日新聞スカウト賞受賞後、書籍の挿絵や雑誌の連載などを手がける。絵本「こびとづかん」シリーズは、累計270万部超。19年12月に「こびとづかん」シリーズ以外には12年ぶりに新作絵本「犬闘士イヌタウロス」を発表した。
キャラクターデザインや造形制作、各種企画制作に携わるなど、幅広く活動中。