薄っぺら美人になるな 齋藤薫さんの助言は「地球を意識しよう」

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教祖と信者の関係性

   女性誌に多くの連載を持つ齋藤さんの鉄板テーマといえるのは、見た目を超えた「ひとつ上の美しさ」である。美しい、あるいは美しくなろうとするのは当然で、みなさん(読者)は上のステージを目ざしましょう、という教えだ。今回は、人としての厚みを備え、内側からも美しくなるには地球のことを(たまには)考えようという話だった。

   男性、とりわけおじさん視点ではツッコミどころも多い。たとえば「すると次第に魂レベルが高くなっていく」といった表現がいくつかある。だが、筆者と熱心な読者の間ではたぶん通い合うものがある。齋藤さんクラスになれば、先生と生徒、教祖と信者のような関係性が成立しているからだ。もちろん肯定的な意味で、である。

   もっぱら外的な美を追い求める読者層の年ごろで、内面の美しさや地球環境への意識を求められるのは荷が重いかもしれない。齋藤さんも、自分の役割が見つかるのはずっと先かもと断っている。要は、そういうことを考えながら生きていこうということだ。

   大手美容誌でカリスマ筆者に説かれれば、考えるだけで美しくなった気にもなろう。それで人生が好転するのなら、美に縁のないおじさんも文句はない。自然災害の多発で地球環境が改めて注目された年を、前向きに締めるのに相応しい一文である。

冨永 格

冨永格(とみなが・ただし)
コラムニスト。1956年、静岡生まれ。朝日新聞で経済部デスク、ブリュッセル支局長、パリ支局長などを歴任、2007年から6年間「天声人語」を担当した。欧州駐在の特別編集委員を経て退職。朝日カルチャーセンター「文章教室」の監修講師を務める。趣味は料理と街歩き、スポーツカーの運転。6速MTのやんちゃロータス乗り。

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