華厳経に学ぶ
哲学の世界では19世紀以降、仏教思想から学ぶ傾向があると言う。西洋哲学の限界を突破する、論理的考察以外に真理を探究したい、人間中心ではなく生きとし生けるもの、といいった問題意識からである。本書では、般若心経、維摩経、歎異抄など8冊を紹介しているが、華厳経が著者のお好みである。東大寺で初めて講義された華厳経は「一即一切」を説く。すべてのものは奥底で結び合い、融けあっているという徹底した関係論である。悟りとは、一切が結び合っているという悟り。因果関係は機械的に分けることはできず、すべての要素が因でもあり縁でもあると。
われわれの意識にはつねに、自分が出てくるが、同時に、自分はすべてとつながっている、と意識することもできる。そのことが、上野村に長く暮らす哲学者から読者への一番のメッセージのように感じる。
ドラえもんの妻