電車の忘れ傘 芳賀繁さんが伝授する三つの対策と「余裕」の大切さ

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真に最強の対策とは

   ざっくり要約すれば「電車で傘をなくさない法」だが、大手ビジネス誌の読者なら、電車や傘といった設定を一般化し「何かを失わないための鉄則」として消化するに違いない。

   そこでのキーワードは「余裕」だろう。すなわち時間と心に余裕があれば、落とし物と違い、忘れ物は防ぐことができる...ということになる。

   私もそそっかしいほうだが、ここまで致命的な忘れ物はない。札幌に出張したおり、会社の先輩に散々ご馳走になった後、ホテルに送ってもらうタクシーで財布がないのに気づいた。隣席の先輩には申し訳ないが、複数のクレジットカードを止めたり、二次会で寄ったスナックに問い合わせたりと、平静を装いつつ青くなって電話をかけまくった。

   財布には免許証なども入れている。面倒なことになったと落胆しながらホテルの部屋に戻ったら、テレビ横のテーブル上に見慣れたそれがあった。なんのことはない、財布をホテルの自室に置いたまま外出するというマヌケな話。何時間かの心痛は、はなから先輩に甘えすぎた罰だと恥じ入った。そこで結論。

   傘から財布まで、何かを失くさない最強の対策は...持ち歩かないことじゃないか。

冨永 格

冨永格(とみなが・ただし)
コラムニスト。1956年、静岡生まれ。朝日新聞で経済部デスク、ブリュッセル支局長、パリ支局長などを歴任、2007年から6年間「天声人語」を担当した。欧州駐在の特別編集委員を経て退職。朝日カルチャーセンター「文章教室」の監修講師を務める。趣味は料理と街歩き、スポーツカーの運転。6速MTのやんちゃロータス乗り。

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