25年間の思いが...
アルバムを最初に聞いた時に、この音は何だろう、と何度となく思った。音色や音質。ビンテージのシンセサイザーのようでありそうでもない。その答えは「スタジオ」だった。
念願だった自分のスタジオが完成した。そこで時間を気にせずにレコーディングする。音に手を加えられる。
しかも、ドラムやベース、ギター、キーボード、パーカッション、全ての楽器を自分で演奏している。これまでも「ステレオ」や「アトリエ」という多重録音シリーズがある。そんなシリーズで発売になったシングルは「未完成」。インタビューでの言葉を使えば「完成形」となったこのアルバムはマルチプレイヤーとしての存在感を遺憾なく発揮している。
アルバムの最後の曲「FIND SONG」は、「平成が終わる、ということを意識して書いた曲」だと言った。
彼がデビューした90年代後半は、音楽業界が遅れてきたバブルに浮き立っていた頃だ。ブルースなどのルーツミュージックを下地にした生ギターのスタイル、泥臭さと哀愁が溶け合ったラブソングは決して時代の主流とは言えなかった。その中で着実に歩みを進めてきた25年に思う事。アルバムタイトルの「Quarter Note」には、そんな等身大の意味もあるのだろうと思った。
平成の山崎まさよしは時流に流されない「孤高の存在」でもあった。令和元年の映画「影踏み」は、彼に違う角度からの新しい光を当てることになりそうだ。
(タケ)