将来世代に配慮する動機を考える

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■『Why Worry about Future Generations?』(著 サミュエル・シェフラー Oxford University Press)

   「Why Worry about Future Generations?」は、前回の書評で取り上げたサミュエル・シェフラーの最新著である。今回の著作は、前著で提示した人類の存続に我々の日常生活における価値の相当部分が依存しているというテーゼを分節化することを課題としている。

「共感」はまったく非力ではないが

   今回の著作を通貫している問題意識は、将来世代に配慮する動機を見いだすことである。

   標準的な道徳理論に功利主義という考えがある。最大多数の最大幸福を是とする理論である。この理論の是非については様々な立場ありうるが、仮に是だとしても、この理論の世代間での使用は、世代内での使用にも増して困難であるという問題がある。功利主義は最大多数の最大幸福の実現を責務として課すが、その責務を課される側はなぜその責務を果たそうとするのか。責務を果たす動機の問題である。功利主義において動機として想定されているのは、共感である。仮に温暖化を放置すれば、100年後に災厄に見舞われる人々がいるとして、その人々に対し我々の抱く共感が温暖化対策を実施する動機になるというのである。

   たしかに共感はまったく非力というわけではない。身近なかわいそうな人々はもちろん、遠く離れた地球の裏側の人々であっても、飢えに苦しむ子どもの映像をみせられれば、我々の多くが多少でも寄付しようという気になるものである。しかしながら、相手が100年先の人々となると、共感という心の機能はうまく立ち上がらないのである。相手が抽象的で掴みどころがなく、感情を喚起してこないのである。

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