思い出のラーメン鍋 吉田戦車さんは妻に隠れて自室で調理した

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袋ならではの作った感

   吉田さんが冒頭で触れたラーメンの「5袋パック」は、乾麺の代表的な売り方で「〇〇の××味」を5個まとめたもの。私もしばしば買うが、300円台後半が多いだろうか。

   即席ラーメン業界は、パイオニアの日清食品をはじめ、マルちゃんの東洋水産、サッポロ一番のサンヨー食品、チャルメラの明星食品などがしのぎを削る。ほとんどの袋麺は作るのに鍋での加熱が必要で、このひと手間がカップ麺に対する劣位(面倒)でもあり、優位(調理感)でもある。

   この作品のハイライトは、言うまでもなく最後の8文字...「鍋から直接食べた」だろう。かつての「自炊時代」もそういう食べ方をしていたのか、と思わせる迫力。これこれ、これが食べたいんだよ俺は、という執念を感じさせる描写だ。

   そして、袋麺ならではの「作ったぞ感」が、吉田さんのノスタルジーを荒々しいまでに倍加させたことは想像に難くない。

冨永 格

冨永格(とみなが・ただし)
コラムニスト。1956年、静岡生まれ。朝日新聞で経済部デスク、ブリュッセル支局長、パリ支局長などを歴任、2007年から6年間「天声人語」を担当した。欧州駐在の特別編集委員を経て退職。朝日カルチャーセンター「文章教室」の監修講師を務める。趣味は料理と街歩き、スポーツカーの運転。6速MTのやんちゃロータス乗り。

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