相棒の義足と「対話」しながら
――慶応義塾大学の山中俊治教授(現在は東京大学)の「美しい義足プロジェクト」に参加されていましたね。
高桑 2008年の終わりに、「ヘルスエンジェルス」(現・スタートライン東京)という切断者が集まるスポーツクラブに行ったら、山中先生も見学に来ていたのが最初の出会いです。
私は当時パラ陸上を始めて、「これから競技をしっかりやっていきたい」と思っていました。先生はデザインという観点をスポーツ義足に投影させたいと考えていたので、私が競技場で履ける義足を作るというテーマでプロジェクトが進みました。
――プロジェクトに参加したことで、競技や義足の考えに変化はありましたか。
高桑 「どう見えたら格好いいか」や「どんな色、質感にすれば心地よく見えるのか」を、プロジェクトでは考えていました。その中で、自分自身が格好いい義足に見合ったパフォーマンスができなきゃいけない、そういう競技者になろうという気持ちをだんだん、だんだん持つようになりました。
――では高桑選手にとって、義足はどんな存在でしょうか。
高桑 体の失った部分を補完する体の一部でもあり、相棒でもあります。
自分の意のままに動かせるようになるのが最終目標ですが、そこに到達するには、義足がどんな状態なら良いパフォーマンスになるかを理解し、自分がどう動きたいのかを確立させることが必要です。義足の長さを調整したり、トレーニングの中で色々なことを試したりと、義足との「対話」をすごく大事にしていています。
――2019年6月21日放送のNHK「おはよう日本」で、今年になって義足を短くしたことを知りました。その後の試合で、好記録を出されているようですが、調整によって力が発揮できているのでしょうか。
高桑 「大きな決断をした」と言われていますが、実際はそんなに大したことじゃないんです。他のアスリートも多かれ少なかれ私と同じような調整をしています。私の場合、色々な長さを試すため前年に思いっきり長くしていたので、短くしたことが強調されたんですね。もちろん、しっかり動けるようになるための措置でしたから、効果は出ていると思います。