丸山真男を初めて読んだ時の手触りと同じよう
同じく2018年4月に世に問うた「知性は死なない」(文藝春秋)は、著者の病気と離職の経験に基づき、望ましい社会として、社会が能力を共有する「共存主義」を提起したものだった。
1979年生れの著者は、今年40歳で、「不惑」(己れの人生に迷いがなくなること)の年ということになる。歴史学者を廃業し、「必然」ではなく「偶然」、「共存主義」に可能性を見出した著者の「不惑」以後の思索の歩みを深い関心をもってフォローしていきたい。
著者本人には迷惑かもしれないが、本書には、著者同様に座談の名手でもあった丸山真男著「戦中と戦後の間 1936-1957」(みすず書房)を初めて読んだ時の手触りと同じようなものを感じた。「誇大な○○イズム、○○主義を排し、ナショナリズムと民主主義を考え抜いた、珠玉の批評」とされるものだ。丸山真男も、1950年代前半の40歳前後に、肺結核を病んで長期の療養生活を余儀なくされていた。
本書と対になる予定の與那覇氏の学術論文集(近刊予定)の『荒れ野の六十年』(勉誠出版)が楽しみだ。
経済官庁 AK