誰もが若いままでは生きて行けない
アルバムの最後の曲は2013年に配信で発売されたクリスマスソング「みんなの願いかなう日まで」だ。
佐野元春には、85年に発売されてトップ10入りしたクリスマスソング「Christmas Time in Blue~聖なる夜に口笛吹いて」がある。"愛してる人も愛されてる人も""泣いている人も笑っている君も""平和な街も闘ってる街も""よく働く人も働かない人も""お金のない人もありまっている人も"と立場や情況を超えた全ての人の祝福を願う歌は、カップルのデートソングが殆どと言っていい日本のクリスマスソングの中では異例のジャーナリスティックな視点の名曲だ。
「みんなの願いかなう日まで」は、そこまで具体的には歌われていない。むしろ多くを語らないことの中に言葉以上の想いが込められている。"みんな"という端的な言葉が意味の広さ。それぞれの人生が決して平板で順風満帆ではないということが暗黙の了解になった年齢ならではの関係。その中には"いなくなった大事な人"も含まれている。
誰もが若いままでは生きて行けない。
いくつもの出会いと別れを繰り返しながら、それでもこうやって生きている。
「秋」というのは、そんなことを感じさせる季節でもあるだろう。そして、そんな風に感じるのが「成熟」ということでもあるのかもしれない。「或る秋の日」は、そういう人たちにこそ向けられたアルバムなのだと思う。
(タケ)