昨今、糖尿病疾患が増加している。2017(平成29)年に厚生労働省が発表した「2017年患者調査の概況」によると、糖尿病の人口は過去最多の328万9000人だ。年間医療費は1兆2076億円に上る(厚生労働省「平成25年度国民医療費の概況」)。糖尿病には遺伝的要因の1型と環境要因の2型がある。2型の発症要因は生活習慣で、糖尿病人口増加を防ぐには「発症の予防や早期発見が重要」だ。
生活習慣を正しつつ、糖尿病にならないよう過ごす。そのヒントが、九州大学久山町研究室とサントリー食品インターナショナルが19年6月に発表した共同研究結果にあった。旨味成分「L-テアニン(以下、テアニン)」を含んだ緑茶を摂取すると、糖尿病リスクの低減に貢献する可能性があると示されたのだ。
糖尿病リスク低減の第一歩「『緑茶を飲む』選択肢を持つ」
J-CASTトレンドは19年9月、福岡県久山町の「ヘルスC&Cセンター」で、緑茶摂取による糖尿病リスク低減の可能性について取材した。九州大学大学院医学研究院衛生・公衆衛生学分野の二宮利治教授によると、テアニンとはアミノ酸の一種で、緑茶の旨味・甘味成分だ。お茶の中でも、玉露や煎茶は1杯あたり約40ミリグラムと、特に多く含んでいる。
「テアニンは摂取後約1時間で血中濃度がピークになり、12時間で消失します。そのため、空腹状態で受診する健康診断ではテアニン濃度を測ることは難しい。そこでテアニンの代謝物であり、摂取から24時間後も血中に持続する『エチルアミン』濃度を測定することで糖尿病の発症リスクを調べました」(二宮教授)
約2200人を対象に、住民健診で使用するアンケート項目の「緑茶の摂取」に関する記録と健診時に採血した保存血清を用いて7年間追跡研究した結果、血清エチルアミン濃度が高い人ほど、糖尿病の発症リスク低下が見られたという。
「バランスのよい食事を取り、適度に運動するなど規則正しい生活を送ることが重要です。そのうえで例えば『普段であれば炭酸飲料や嗜好品を飲むところを緑茶に替えてみる』ことが望ましい。日々の中に『緑茶を飲む』選択肢を持つことが、糖尿病リスク低減への第一歩になるのではないでしょうか」(二宮教授)