抹殺されてしかるべきだったバンドが...
更に今回セルフカバーされているのは、発売中止になったアルバムに入っていた「さようなら世界夫人よ」。ヘルマンヘッセの詞に曲をつけたものだ。オリジナルではデビュー前の学生でフルートを吹いていた吉田美奈子がコーラスで参加。もう一曲の「コミック雑誌なんか要らない」は、内田裕也がカバーして映画化もしている。彼に対しての追悼だろう。
そういうアルバムを聞いて、何よりも驚いてしまったのが一曲目の「乱破者」だった。
何しろいきなり尺八で始まるのだ。イントロの尺八に載せて、"臨・兵・闘・者・皆・陣・烈・在・前"という9文字を呪文のように呟いている。元黒猫チェルシーの20代のメンバーのバンドサウンドと全編の尺八。歌詞も文語調。それはこれまでの頭脳警察ともPANTAの音楽とも明らかに違った。
「アルバムを間違えた、と思う人も多いでしょうね(笑)。色々、トライ&エラーを繰り返しましたけど、ここに行きつくのかなと。日本のロックといいながら妙にジャパニーズを取り入れるのもわざとらしいですし。これは自分の出自なんです。ルーツ。小学生の時に、親父が魔除けだからこれだけは覚えておけよと教えてくれたんです。忍者の呪文なんでしょう。家紋も9星でしたし。祖先は忍びの者だったのかもしれない。いつかこういうテーマで書きたいと思っていたんですよ」
全10曲。同時代を生きた仲間たちに対しての鎮魂歌のような曲や回想のようなバラード。小劇場劇団と組んだ今年の春に行った公演で使われた壮大な組曲。発売中止の「セカンド」に入らなかった曲やPANTAの音楽体験の始まりのようなロックンロールのメドレーもある。様々な意味で50周年というキャリアを織り込んだようなアルバムだった。
「誰よりも先に抹殺されてしかるべきだったバンドが50年たって一緒にやれてる。幸せですよ。そういう意味では通過点、途中経過。止まってないです。変わってないね、と言われるのは止まってないからですね。同じことをやっても周りが変わっているから変わってないように見える。好きなこと、興味あること、歌いたいことをやっていく。ピリオドはないですね」
止まっていないから変わらないように見える。それこそが"現役"ということではないだろうか。今年69才。9月21日、渋谷マウントレーニアホール、11月25日、渋谷duo MUSIC EXCHANGEで50周年コンサートが行われる。
(タケ)