「風を感じて」はまさに「みんなの歌」だった
二部は、バンドが登場した。
町支寛二(G)、小田原豊(D)、美久月千晴(B)、長田進(G)福田裕彦(KE)、河内肇(P)、古村敏比古(Sa)、佐々木史郎(Tru)、清岡太郎(Tr)、中嶋ユキノ(Ch)、竹内宏美(Ch)という不動のメンバー。古村敏比古とはまもなく40年になろうとしている。
まだバンドでツアーも出来ない頃に作った曲たちを今、最も信頼できる超一流のメンバーと演奏する。二部の一曲目の「雨の日のささやき」、二曲目の「恋に気づいて」は77年の二枚目のアルバム「Love Train」の1、2曲目。はずむように口ずさみたくなるポップソングとして支持の高かった曲が高度なアレンジで生まれ変わる。ステージで初めて歌ったという79年の「子午線」、アメリカ西海岸のAORのような「ミスロンリーハート」や「いつわりの日々」。当時は語られることも少なく、それでいてファンの中で聞き継がれてきた曲が今の音で蘇ってゆく。
そんな流れの中での「風を感じて」はまさに「みんなの歌」であり、本編最後の曲、79年のアルバムのタイトル曲「君が人生の時...」は、会場にいた全ての人の「人生の歌」のようだった。
浜田省吾は「メモリーブック」の中でこの日のことをこう話している。
「長く置いたままになっていたワインを出してきて『もうこれ、飲めないかもしれないね』なんて言いながら栓を開けてみたら、『こんなに美味しかったんだ!』と思うくらいのビンテージのワインになっていた」
彼が、なぜ、これだけ根強い聞き手に支えられているのか、音楽はどう聴かれるべきなのか、そして、歌の生命力とは何なのか。
いくつもの答えのようなライブ映像だった。
2019年9月14日からは「100% FAN FUN FAN・Welcome Back to The 80's PartⅠ」がスタートする。
それに先駆けて、82年のアルバム「PROMISED LAND~約束の地」の中の「凱旋門」、80年のアルバム「HOME BOUND」の中の「明日なき世代」、81年のアルバム「愛の世代の前に」の中の「防波堤の上」が新録音でシングルとしてDVDと同時発売される。
父や母の思い出と重なる曲と60年代後半に思春期を過ごした世代の歌。そんな背景はファンクラブの会員なら誰もが知っているだろう。今、なぜその三曲なのか、ステージでそんな話も聞けるに違いない。
(タケ)