優しいアルバム
アルバム「LOVE」で特筆しなければいけないのは、あいみょんが詞曲を書いた「キスだけで feat. あいみょん」だろう。テーマは女性の生理。しかも「私 今日は女だから」という部分を菅田将暉に歌わせている。
古いところではサザンオールスターズの「恋するマンスリーデイ」が、思い浮かぶくらいで歌にするにはハードルの高いテーマを、あいみょんはいじらしいまでのラブソングに仕上げている。しかも、女性の気持ちを男性が歌い、男性の心理を女性が歌う。「男らしさ」や「女らしさ」という「性差」を超えた稀有なラブソングだった。
あいみょんは95年3月生れ。つまり「バブルを知らない世代」と言って良いだろう。もし、人々の「希望」が、社会的な環境や経済的事情に左右されるとしたら、その実感がないままに成人した世代である。
ミュージシャンのインタビューで「世代」という言葉に肯定的な反応が返ってくるようになったのは、この数年のような気がしている。具体的に言えば2011年以降だろう。去年のRADWIMPSの「ANTI ANTI GENERATION」もそんな例だ。
それ以前にしばしば耳にしたのは「世代ではなく個人」という反応だった。そうした答えは「安易に一括りにしないでくれ」という自意識の表れだったように思う。
近年は違う。「同じような時代を生きている」「人はひとりでは生きていけない」という意識。それが今の若者たちの「優しさ」にもつながっているのではないだろうか。
菅田将暉の「LOVE」は、優しいアルバムだと思う。「ギザギザな夢」を見ることしか出来ないまま「ものさし」を探している若者たちのラブソング。「よくわからない」彼らに対しての「新しいものさし」を大人たちも作らなければいけないのだと思う。
(タケ)