ファミリーという病 下重暁子さんは「そんなに美しい存在か」と問う

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群れない、媚びない

   下重さんの論旨には、少なからぬ反論が寄せられるだろう。そもそもベストセラーとなった『家族という病』にも、家族的な価値観を愛する論客から批判が寄せられた。

   もちろん私は「個」を重視する下重さんを支持するし、トピックである吉本の企業体質を家族論に落とし込む論法も是とするのだが、時に「そこまで言うか」という感想を抱く部分もあった。たとえば、家族の構成員が父母や子どもという役割を演じているだけで、本音をぶつけ合うこともない、といった記述である。

   現実には、家族のシステムに救われている個人もあるはずだし、本音をぶつけ合って泣き笑いを重ねる一家もあろう。感情に流されて本質を見失うことはあっても、当事者が幸せならそれでいいではないかと思うのだ。筆者からは「あなたは甘い」と言われそうだが。

   下重さんの連載には「群れない、媚びない、自由気ままに綴る道草エッセイ」の副題がついている。空気が同じ方向に流れやすいこのご時世にあって、群れない結果の「極論」、媚びないゆえの「直言」は貴重である。そこはもう、全面的に肯定するしかない。

冨永 格

冨永格(とみなが・ただし)
コラムニスト。1956年、静岡生まれ。朝日新聞で経済部デスク、ブリュッセル支局長、パリ支局長などを歴任、2007年から6年間「天声人語」を担当した。欧州駐在の特別編集委員を経て退職。朝日カルチャーセンター「文章教室」の監修講師を務める。趣味は料理と街歩き、スポーツカーの運転。6速MTのやんちゃロータス乗り。

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