自然という癒し 鎌田實さんは信濃の雑木林で縄文人の声を聞く

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健康エッセイの本流

   自然と心身の健康。そんな身近なテーマで一本書くのは、プロの物書きならさほど難しいことではなかろう。しかし同じ題材を、名の知られた医師が内外の研究成果を引きながら説けば、説得力は倍加する。身辺雑記と科学的知見の合わせ技...健康エッセイの極意にして本流である。

   鎌田さんの発信が、幅広い人気を長らく保っている理由がそこにある。高齢化ニッポンに欠かせない指南役。親しみやすい福相もいい。

   湧き水に水芭蕉、フィトンチッドやマイナスイオン、太陽の光。文中にちりばめた自然由来の言の葉は、読者を森や原っぱへといざなう。中には、ふと思い立っての外出が物理的に難しい人もいるだろう。その意味で、部屋に花を飾るだけで心が落ち着くというデータは、想定の範囲内ではあるがホッとする。鎌田さんらしい心配りだと感心した。

   私も花にはこだわりがあって、撮り下ろした写真を毎朝ツイッターに上げている。植物には大して詳しくないのだが、写真を見た方が癒されればと続けているので、花を見るだけで免疫力が増すという説に、わが意を得たりだ。

   「投稿するだけで十分だよ」と、縄文人の声を聞いた気分である。

冨永 格

冨永格(とみなが・ただし)
コラムニスト。1956年、静岡生まれ。朝日新聞で経済部デスク、ブリュッセル支局長、パリ支局長などを歴任、2007年から6年間「天声人語」を担当した。欧州駐在の特別編集委員を経て退職。朝日カルチャーセンター「文章教室」の監修講師を務める。趣味は料理と街歩き、スポーツカーの運転。6速MTのやんちゃロータス乗り。

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