米サンフランシスコに本部を置く環境保全団体「WILDAID」と、アフリカゾウの密猟防止と象牙消費をなくすことを目標に掲げるNPO法人「アフリカゾウの涙」は2019年8月8日、「#私は象牙を選ばない」キャンペーン発表会を東京・丸の内の日本外国特派員協会で行った。
ワイルドエイドの「Chief Program Officer」ジョン・ベイカー氏、WILDAID・日本代表の山脇愛理さんらが登壇。1980年には1000万頭を数えたアフリカゾウが、密猟などによって現在、35万頭にまで減少していることや、日本が世界最大の象牙販売国との実情を伝え、象牙需要をゼロにする必要性とアフリカゾウの保護を訴えた。
日本国内で象牙取引が続いている事態を憂慮
「日本において象牙は『高級品』ではなく、ハンコなどの『実用品』として何気なく消費されています。それが問題なのです」
山脇さんは冒頭でこう指摘した。日本国内で取引される象牙は80%が印鑑、残りの20%が彫刻や和楽器などに使用されている。両団体は現在も日本が国内で取引を続けている事態を憂いており、多くの人が知らない間に象牙を利用した結果、その需要に応えるためにアフリカゾウが密猟される現在の流れに歯止めをかけたいと考えている。
2016年に南アフリカで行われたワシントン条約締約国会議(COP17)で、象牙の国内取引は世界的に閉鎖することが決議され、当時「象牙消費大国」だった中国や香港は翌17年に象牙の国内・域内取引をやめる計画を発表した。だが、生物多様性の保全を目指す活動を行う「トラ・ゾウ保護基金」の坂元雅行事務局長によると、日本政府は「日本の象牙取引は合法であり、規制の対象ではない」との見解を示したという。
ただ山脇さんは、日本は象牙の国内取引規制が緩く、密猟や違法取引を招く要因になっていると語る。象牙登録には抜け穴が多いうえ、密猟地からさまざまな国を経て日本へ届く間に、密猟された象牙を「合法」にできてしまうと続けた。また坂本氏によると、11年から16年の間に発覚した日本から中国への象牙密輸出入は113件にのぼり、うち106件は中国当局が摘発した。日本が止められたのは、たった7件に過ぎないと説明した。