白樺のある風景が目に浮かぶシベリウス「樹木の組曲」

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不思議な雰囲気を残したまま曲は終了

   そんなシベリウスが「珍しく」ピアノの小品を書いたのは、戦争の影響でした。国外からの印税受け取りが難しくなり、いわば「すぐ売れて、お金になる」作品の必要性に迫られたからです。結果的にシベリウスのピアノ曲の中でもっとも人気があり、彼の語法を広く知らしめることになったこの曲集が、歴史の偶然から登場したと考えるのも、興味深いことです。

   5曲からなる「樹木の組曲」は、最終曲「樅ノ木」が、あたかもジャズの即興演奏にも通じるようなアンニュイな雰囲気とともに人気が高く、アンコールピースなどでももっとも頻繁に演奏されますが、第4曲「白樺」もそれに勝るとも劣らない人気があります。

   北欧の短い夏、白樺林を吹き抜ける風のようなアルペジオで始まり、不思議な響きのまま曲は続きます。あたかもその林に迷い込んでしまったかのような・・・そして、わずか1分40秒ほどで、不思議な雰囲気を残したまま曲は終了するのですが、さわやかな清涼感が残ります。

   暑い夏の時期にお勧めの、シベリウスの小さな傑作です。

本田聖嗣

本田聖嗣プロフィール
私立麻布中学・高校卒業後、東京藝術大学器楽科ピアノ専攻を卒業。在学中にパリ国立高等音楽院ピアノ科に合格、ピアノ科・室内楽科の両方でピルミ エ・ プリを受賞して卒業し、フランス高等音楽家資格を取得。仏・伊などの数々の国際ピアノコンクールにおいて幾多の賞を受賞し、フランス及び東京を中心にソ ロ・室内楽の両面で活動を開始する。オクタヴィアレコードより発売した2枚目CDは「レコード芸術」誌にて準特選盤を獲得。演奏活動以外でも、ドラ マ・映画などの音楽の作曲・演奏を担当したり、NHK-FM「リサイタル・ノヴァ」や、インターネットクラシックラジオ「OTTAVA」のプレゼンターを 務めるほか、テレビにも多数出演している。日本演奏連盟会員。

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